時刻はいつの間にか14:00を過ぎていた。
前後するとは言え、予定時刻を回ったので緊張感は増して行った。

前回の産院での手術は着替えもせず、診察室とほぼ同じ部屋で内診かと思ったらアレヨアレヨと色々取り付けられて、心の準備がままならない内に始まった。

個人病院だからか手続きも簡単だった。

当たり前だけど大分違う。

そしていよいよお迎えがやって来ました。

夫と息子も一緒に。

8階から3階へ。

大仰な扉の前でバイバイをした。

息子はキョトンとしていた。

笑顔で「後でね」と手を振った。

深呼吸。

手術室へ。
当たり前だけど分娩室とは異なる。
テレビ等でも見る如何にもな手術室。

余計に緊張する。

心電図や酸素値を計る機械などを取り付けられる。

ベテランぽい医師がやって来てわたしの腕を取る。

「血管ないね〜」

戯けた風だったけど自信の無さからくる言動ではないので、場の雰囲気が寧ろ和やかになった。

「こんな言い方したら不安になっちゃうよね〜ごめんね〜」

一発で成功。
全く疑っては無かったけど流石です。

皆様わたしを練習台に少しでもスキルアップしたのなら幸いですと思えた。

この少し軽い感じのベテランの先生が付いてくれるなら、担当医がこの人でも大丈夫だと漸く腹をくくれた。

緊張が少し解れて突如悲しみが降って来た。

「……ちゃんと産んであげられなくてごめんね……」

そう呟いて泣いた。

ベテランの先生は「えっ?どうしちゃった?」と困惑気味だったけど、かんごしさんが

「辛いね……」

そう言って手を握ってくれた。

温かかった。

わたしよりずっと若い看護師さんがとても頼もしかった。

麻酔が入った。

「麻酔で変な夢見るかもしれないよ」

今まで2回とも夢一つ見なかったから今回も目覚めたら終わってるんだろうな。

「数かぞえてねー」

「いーち、にー、さーん…よ…ん……ご……」

うっすらと麻酔が効くの速いなと思った。

手術前の記憶があるのはそこまでだった。